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健彦は今まで、塾に通ったことはない。
小学生の時は宿題しかしておらず、予習と復習なんて碌にやったことはなかったのだが成績は良かった。
でも中学では、そうはいかなかった。授業は速く進むし、内容も複雑になっている。
中学では陸上部に入部したのだが、そこでの短距離走に目一杯の力を注いでいるわけにはいかなくなった。
健彦は部活動が終わったら、家で復習をしようと試みるがどうにも集中が出来ず、ネットやゲームの誘惑に負けて結局、翌日の授業に付いていけずの悪循環に陥っている。
学校の勉強というか、進路についてあまり考えていなかったのも原因だ。どこの高校を受験するのか、決めていない。
健彦は中学生になって、ようやく気付いたことがある。
周りの同級生たちの多くが、いつの間にか塾通いをしたり、家庭教師に習ったりしている。これであっという間に学力の差が開いて、自分は底辺だ。
健彦は教室を見渡す。そしてとある一人の男子に目を留める。
彼の名は富澤功希という。
そういや、あいつは塾に行ってもないし家庭教師も付けてないと言っていた。彼は自主的に、勉学に励んでいる。それで成績が上位。
どうも俺とは集中力が違うらしい。羨ましい奴。
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