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◇
学校からの帰り道。
寒の入りだ。冷たい空気を吸い込むと、肺から全身が凍っていくよう。
気分の晴れない健彦は、落ちていた小石を蹴った。
石は街路樹の枝に当たって揺れ、そこに留まっていた灰色のヒヨドリたちが驚いて一斉に飛び立つ。翼の振動で大気の塵と、抜けた羽毛が舞った。
飛び立った鳥に驚いたのは、健彦の前方から来た通行人の女性。
二十代の社会人だろう。職種はまるで分からないが、明るい顔立ちの女性である。癖のないサラリとしたショートヘアと白い首、スラリとした手足。上品な化粧をしている。
きっと周りにいる人たちからの好感度がいい人なんだろう、と健彦は思う。
擦れ違いざま。
健彦は彼女から、
「あー、びっくりした。このガキ……!」
と、言われてしまった。
健彦は鬱憤が溜まっていたせいもあって瞬発的に言い返す。
「うっせー、ババア!」
そう言い、走り去った。風のように。
家へ走る健彦の後方では、女性が言い返す声が響く。
「何よ、悪ガキー! わたし、まだ二十代ー!」
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