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◇
その後。
健彦は陽がとっぷり沈んでも、自室のカーテンを閉めずに過ごすことが増えていた。
向かいのアパートに住む、あの女性の帰宅を見届けるまでは。
部活を終えて家に戻ってくる健彦よりも、大体は彼女の方が帰宅が遅い。だから健彦は母からよく言われるようになってしまった。
「部屋のカーテンを閉めなさい」
と。
部屋の灯かりを点けると、室内が窓を通して夜の外では丸見えになるので注意を受ける。
今日はまだお向かいのお姉さんを見ていないので、健彦はカーテンを閉めたくなかった。でも母に言われてしまったので、しぶしぶ閉めた。
これでもう、今日は窓の外の様子を見ることは出来ない。
そういえば、あのお姉さんて彼氏はいるのかな、と思いを巡らせる。暴言を吐くんじゃなかった、と後悔もする。これが最近の健彦であった。
この様子に目聡い兄が気付かないわけがなかった。夕食の席で指摘を受ける。
「健彦。お前、ストーカー?」
「違う……!」
女性に好意を寄せていたことを兄に見抜かれ、健彦は赤面した。
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