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side-颯太- 「やだ、颯太」と、いちこの可愛い声が響きわたるのは俺の部屋。 上目遣いでおねだりしているような仕草は昔からで、計算してるんじゃないってわかりながらも、やっぱり可愛いなぁと、こんなときでも思ってしまった。 「ダメ。やるって言ったのお前だろ?」 「だって、わかんなかったんだもん」 「だから、俺が今、教えてやってるんだろうが」 「だってこんなに難しいなんて、思わなかったんだもん! やっぱりやりたくない!」と、言ってテーブルの上に広げた数学のノートを閉じた。 「おい、いちこ」と、続きを教えようとしたのに、ふらふらと俺のベッドに潜りこんだ。 ふて寝してごまかす気だってわかる。堂々と。 「いちこ」と、めくろうとすると、「お布団、颯太の匂いするね」と言った。 「俺の匂い?」 「うん」と、弾むように言うから、不覚にもまたドキッとした。 ていうか、ベッドの中ってどんだけ無防備なんだよ。 キスだって、あまりしてくれないくせに、ずるいよ。まったく。 ならさ。 「一緒に寝てもいい?」と、訊いた。 なのにその直後、すーすーと寝息。 というか、勉強。 「いちこ、起きろ!」と、無理矢理、剥ぎ取った。
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