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だけど教科書の文字が頭に入っていかない。
眠くなってきたなと思った頃だった。
わんわんと、イチタの鳴き声が聞こえてきたのは。窓から外を見下ろすと、暗闇の中にぼんやり人影が見えた。
颯太だって、なんなくわかった。
「颯太!」
「おお。いちこ?」
「あがる?」と言ったら、「いいや。帰る」と言った。
「そっかー。バイト疲れたの?」
「今日、すっごい混んでさ」
「ふうん」
「じゃあ。おやすみ」
「あ。うん。おやすみ」
なんだ。ちょっと話したかったのにな。もう行っちゃうのか。
がっかりしてしまった。
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