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ゆうちゃんと別れて、駅のホームで電車を待っていると、有野先生を見つけた。 たぶん、学校帰りなんだと思う。リュックを背負って、手にファイルを抱えていた。 「先生」と、駆け寄ると、ゆっくり振り返った。会いたくなかったのか、今にも溜め息でもつかれそうな顔をされた。 「いちこさん」 「こんにちは」 「こんにちは」 「先生もこの電車ですか?」と言うと、「うん」と頷いた。 同じ車両に乗り、隣に座った。有野先生は手前の駅で降りるそうだ。 「勉強してますか?」と、よそよそしく訊く。 「宿題だけは」と言ったら、「なら、いいけど」と呟いた。
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