逃走劇は出会いの始まり

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 そう告げられているうちにセイハは素早く結晶体を懐に戻した。見つかれば騒ぎになる所の話では無い、奪われる可能性も悪用される可能性も、様々な不測の事態が起こる可能性があった為である。 「それを使って戦争でも起こす気か?とにかくそんな物騒なもんを持ってるなら早くこの周辺から出てって貰う他ねぇな」  エンジがそう言うと、壁に向かいもう話す事は無いと酒を再び傾けだした。しかし、セイハもこうなる可能性も理解して話して居た為、口を閉ざす事無く説明を続けた。  背中を向けてはいたが立ち去る様子は無かった為、まだエンジに話を聞く意思は有る様にも思えた。 「近々、帝国たちのお偉いさん方の会議とやらが開かれるんだが、その会議の情報を手に入れてな。実は蟲狩りを行うらしい」  黙って聞いているつもりだったエンジだったが、思わずグラスを落としてセイハに向き直った。 「馬鹿な!蟲狩り何てしてみろ!ただでさえ居住区はアイツ等の所為で狭まってるんだぞ!今度は一体何人の人間が餌食になるのか解ったもんじゃない!!」 「俺もそう思う。だからこそコイツが必要になって来る、この結晶体の中にはあいつ等の一番嫌いな物が詰まってるんだ」 「何だ?あの化け物共に弱点何てあるのか。俺のような人間こそが天敵であるとは自負しているが」 「確かにエンジさんほどの力が有れば、町一つ守るのも無理な話では無いかと思います。しかし、全ての町に貴方の様な強者が、存在している訳ではありませんので。この結晶体にはウミと呼ばれる化け物達が忌み嫌う生命の源と言われる物が詰まってます」   「ウミか、聞いた事がある。あの蟲共が奪い続け、この荒野を作り出す前に存在したと言われる水源の事か」
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