逃走劇は出会いの始まり

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「じゃあな。三日分のギクよこしな。オッサン俺は忙しいんでな、後はお人好しのコイツにやらせとけ」  エンジは責任者らしき成り金男にそう言うと、いかにも不満そうに顔をしかめた成り金男だったが、怪力と筋肉の隆起を見るだけで怯えているのか変な笑い顔でギクを手渡した。 「っち!殆ど俺が運んだのにこれっぽっちか。まぁいい、じゃあな」  町のはずれに立てかけていた、誰も持ち上げる事が出来ないような重量の槌を持ち上げると、エンジはサングラスのずれを直した。真っ赤な髪を靡かせながら何も無い砂の海に、コンビニにでも出かけるかの如き気楽さで消えて行った。 「おい!穴掘り男。あの男引き止められんのか!あの力は金になるぞ」 「本人が嫌だって言ってますし。金って言ってもね、どうしてもって言うならご自分でどうぞ」 「、、、ぐぐぬ。くそ!どいつもこいつも、サンドクローラーの体液採取を急げ!!」  セイハは成り金に言葉を返すと、後ろを向いた瞬間に舌を出してやった。三日の間にセイハは穴掘り男と呼ばれる様になっていた。別にやましい事は何も無い、本当に穴ばっかり掘っていた為であった。  だからこそ、そう呼ばれたところでセイハは何も返さず何とも思ってはいなかった。勿論、穴はサンドクローラーの仕事が終わってから掘っていた為、実質セイハはほとんど寝てはいなかった。 「じゃあ私も約束通り、お手伝いできる間だけお手伝いさせて頂きますね」  セイハは無給で手伝っていた。勿論、町の人達の好意から食料と水は分けて貰ったりはしたがギクは貰わなかった。穴掘りだってそうである。人々の為と、町の外側に出来るだけ広く長く土を盛って穴を掘り続けていた。
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