逃走劇は出会いの始まり

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 セイハは掘りを作り続けていた。炎天下の下、穴ばかり掘っては土を盛る作業を繰り返す。  ウミを作る為には膨大な土地が必要だと言う事は知っていた。堀で町を囲うようにするとようやく準備は整った。魔物結晶体を使う準備が出来た半月程経った頃それは突然現れた。 「さ、サンドホエールだ!早くこの場所から離れないと!!」  一人の町人がそう叫ぶと、散り散りに町の人々は逃げ始めた。そんな中、穴ばかり掘っていたセイハは、もう少しで出来上がる掘りに今まで大切に使っていたスコップを放り投げた。 「クソ!これからだと言うのに!逃げないといけないのか」  ただ逃げれば助かるであろう。しかしこの町は二度と復興はおろか再生も出来なくなってしまう恐れもある。セイハはサンドホエールを何とか町から逸らせないかを考えていた。 「何やってんだ!アイツがこっちに来たらアンタがいくら強かろうが絶対にこの町ごと消えてなくなっちまうぞ!」  この町の護衛警備を行っている男にそう言われ、セイハは立ち上がったが逃げるどころかその男に質問していた。 「アンタ此処は好きか?此処はアンタの守りたい場所なのか?」 「何言ってんだ、当たり前だろうが!俺は此処で育ち、此処で暮らし、俺の子どもだって此処にいる!此処より良い場所はあるが、此処の代わりになる場所は何処にも無いんだよ!」  それを聞いたセイハはニヤリと笑うと”そう言うの好きなんですよね”と何処か他人事のように喜び、サンドホエールの方へ歩き出した。
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