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背中越しに何か聞こえてきたが、恐らく引き止める言葉でしかないだろう。今から引き返した所で何も解決せず何も救う事など出来ない。
何より自分のしたい事をする為に旅でもあった事を思い出した。自分が決め自分で選べる自由である。だったら自分のしたい様にただ誰かを救う事だけを考えた。
蜃気楼に溶ける様な土煙を上げるサンドホエールに向かう途中、隣りで地面が陥没したかと思うとセイハの隣に巨躯の影が近づいた。
「ヒトリトハ、ミズクサイ」
現れたのは見知った大きな猫である。セイハは何も言わず黙ってその背中にいつものように座ると、目的地も言わず跳ね上がり走るよりも遙かに早くサンドホエールに向かいだした。
「良いのか?今度こそ最後かもしれないんだぞ」
「サイゴマデ、ツキアッテヤル」
旅の荷物をキットから引きはがし投げ捨る。少しでも身軽になる様にセイハは勤めながら、自分の衣服やポケットに何があるのかを確認し、サンドホエールとの距離を風切音の中で計っていた。
近づくにつれサンドホエールの輪郭がくっきりと表れその巨大さと、今までと比べ物にならない緊張感がセイハとキットを縛りつけはじめた。
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