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何かを擦りつける様な轟音と、広範囲にわたる土煙、断片的な爆発音が広がる。
辺り一面に白銀色に輝く砂の世界が広がる。照りつける日差しは肌を焼くと言うよりは肌を壊すと言った方が正しい程の陽射しであった。
空には二つの太陽が、この世界を焦げ付かせながら、何者をも生かさんとするかの様に強烈な日差しを突き刺して来ていた。
「、、、、、、、まさか、あんな化け物が出てくるとは」
全身に薄汚れたローブを着込み、淵の広い帽子を被った冒険者は、懐には空色に輝く結晶を大事そうに抱えながら、背中から迫りくる轟音に振り返る事無く、ただひたすらに走り続けた。
冒険者の背中には、砂塵と土煙の混じったもやの中から、電車程の大きさの物体がすぐそこまで迫っていた。
「クソ!間に合うか。キットォォ!!良い加減に出てきてくれぇ!!」
そう冒険者が叫ぶと、突然真横から車ほどの大きさの、片耳の無い猫のような生き物が冒険者を咥えて、巨大な何かを横切る様に通り抜けると、そのまま真っ直ぐに逃げた。
「キット!何処行ってたんだよ!」
「シヨウダ」
そう答えた巨大なキットと呼ばれた猫の背中には、鞍が付いており冒険者が飛び乗ると後ろを振り返った。方向をゆっくりと変えながら巨大なソレは此方に方向を向きなおすと再び轟音を響かせながら迫って来た。
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