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キットがそう言うと、セイハは”とにかく寄ってくれ”とだけ言い、静まり返り斜めに転倒した様な形のサンドホエールは、足があらぬ方向に動いて居るのを確認しながら近づいた。
「これ以上は危険だな、キットは隠れていてくれ」
「コトワル」
あくまで着いて来ると言い張るキットに、セイハは溜息一つ吐くと頭を掻きながら”わかった”とだけ答えた。キットを止める術はセイハには無く拒否権など元より無い事を思い出した。
近づくとそのスケールの大きさと不気味さがより際立つように思えた。ほとんどが目で出来ている身体は鋼鉄のように固い透明の膜のような物で覆われている。
足に至っては近づくにつれ、毛では無い事が見て取れた。毛の様に見えたそれは真っ黒なうねる蛇のような生き物の集合体であった。
「デ、ドウスルンダ」
キットがそう言うと、セイハはキット乗せに再び乗り込みサンドホエールの正面に運んで貰うように頼んだ。二、三度の跳躍で元来た道を戻る様に正面に辿り着いた。
「此処からは本当に一人だ。俺は中に入る」
胴体を半分に割った様な口の前で、微かな呼吸の風を感じセイハは中に飛び込んだ。キットも追おうとしたが、体の大きさから中に行こうとすれば確実にサンドホエールを起こす事になる。
こうなっては見守る他無い。キットは主人を待つだけである為、万が一を考え、今居る位置から動く事なく座った姿勢のまま待ち続けた。
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