逃走劇は出会いの始まり

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 そして、最奥に行く前に魔力結晶体を砕いたとの事だったが、彼女の手を繋いでたはずが何度も離れてしまい、追いかける為にサンドホエールのさらに奥に進む事となり今に至る。 「どうやって出たのかも解らないし、どうして彼女の手を握っていたのかも解らない」  そう言い、自分の来ていたシャツを絞り女性の上にかけると、まるで眠っていただけかの様に目を薄っすらと開けた。燃える様なヴァ―ミリオン色の瞳が覗きこんだセイハとキットを捕らえた。 「、、、、、うあ。ん?」  何やら喋ろうとしたが、結局言葉を紡ぐ事が出来ない様子で自分の声が出来ない事をジェスチャーで伝えようとしている事が分かった。 「取りあえず、生きてて良かった。セイハって言います、こっちはキット。君は?」  名を尋ねると、首を傾げたと同時にお腹が空いたのジェスチャーが飛んで来た。どうやら此方の言葉は聞こえていないか意味を理解できない事が分かった。 「仕方ない。じゃあ行こうかキット。この子の服とご飯を買いに町まで戻ろう」 「オヒトヨシメ。ドウナッテモシランゾ」  警戒を怠らないキットをよそに、セイハはキットの背中に彼女を乗せウミを噴出し続けるサンドホエールを背に町に戻る事となった。  このウミは、やがてこの世界の十分の一にまで広がり、世界中の騒ぎとなった。しかし、セイハと言う一人の男がやった世界変革の偉業達成者を知る者は、この世界には彼女とキット以外知る由も無かった。
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