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キットは片側の耳をヒクヒクさせながら、後ろに差し迫る怪物をどの方向に避けるかを模索しながら馬より早く駆け抜ける。時折、激しい鞭打ちの様に節足動物の巨大な何かが飛び交って来たが器用にも避け続けた。
バウンドしながら跳ねるように駆けるキットは、アトラクションさながらに上下するためロデオ状態であった。それをしがみ付く様に冒険者は、後ろに追いかけてくる怪物を見据えながら服の中から赤銅色の蜥蜴を取り出した。
「虎の子でも足止めできるかどうか。キット、こっち見るんじゃねぇぞ!!」
「ショウチ」
ーーーーーーーー背中の怪物と対峙する様に冒険者はキットの背に立ち上がった。
クリーム色のかさついた岩のような肌には黒い斑点が幾つもついていた。規則的にその巨漢の脂肪をうねらせながら、短い棘の様な足で進む姿は不気味で見る者を圧巻する。
眼前には巨大な人の顔が付いており、口からは何本も昆虫の足の様な物が見える。電車の大きさ程の芋虫がそこに差し迫っていた。
「悪いがもうお前にくれてやれるモンはこれ位でな。蜥蜴は食った事無いだろう!!」
そう言い、握った赤銅色の蜥蜴を腰から取り出したパチンコで狙い澄まし、巨大な芋虫の口に投げつけた。ニヤリと意味深に上がった口角を見せつける様に冒険者は何故かキットの頭を抱えた。
蜥蜴が口に入って暫くすると芋虫の足がすぐさまふらつき、土煙を上げながら転倒すると、地面が揺れる程の衝撃が走り冒険者とキットはそのまま吹き飛ばされた。
が、それも束の間。次の瞬間には芋虫の頭部が轟音を響かせながら火柱を上げたのだった。
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