逃走劇は出会いの始まり

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「ヤッタノカ?」 「いいや、あの程度で焼失させられるなら苦労はないさ。言ったろう、足止め程度だ奴らの再生力は異常極まりないからな」 「タタカワナイノカ?」 「馬鹿言うなよ。勝てない喧嘩する方が素人でしょうが」 「カモナ。ハヤクナルゾ」  そう言い、減速どころか先程よりも早く駆けようとキットは、巨体をバウンドさせながら砂埃を上げた。舌を噛まない様に口を閉ざした冒険者は、火柱の上がった方を見ると距離は離れてはいたがゆっくりと此方に向き直りながら再生し始めていた。  遠目でも解る程、ケロイド状になった巨大な人面芋虫は火が消えると、溶けながら焼ける様な音と共に元の姿に戻ろうと変異していった。 「ちょっと待て!アレもうこっちに向き直ってる。直線じゃまた追いつかれる、、、、、じょ」  冒険者は舌を噛んだ為、それ以上喋らないでいるとキットが突然語りかけて来た。 「クソ、ダレカイルゾ」  キットが見ていた方向を見てみると、岩と砂しかない荒野の中に蠢く一つの影のような物が見えた。遠目であったが、それが徒歩の何者かである事を理解すると、進行方向を今更変える事など出来ない為冒険者は叫んだ。
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