逃走劇は出会いの始まり

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ーーーーーーーー人の形をしたそれは一瞬怪物のようにも見えた。  まるで鎧でも纏って居るかの様にも見える程に隆起した筋肉で覆われた全身を、真っ黒なシャツと真っ黒な皮のレザーパンツで全身を覆いスポーツ用のサングラスをかけていた。女性かと見まがうほど長く赤い髪は腰まで伸びており焼ける荒野には不格好である事は一目瞭然である。 「そこの男!!サンドクローラーだ!!死にたくなければ引き返すか何処かへ隠れろぉ!!」  冒険者は叫んだ。キットは”ホウッテオケ”と小言を漏らしたが聞こえない振りをして、長髪の男に再び注意を促すと、ようやく気が付いた様子で此方を向いた。  しかし、どういう訳か長髪の男は逃げるどころか、煙草に火をつけると背中に背負った巨大な槌のような物を持ち上げながら埃を払った。 「もう行くぞ!このままじゃ逃げ切れなくなる!アンタも早く逃げろよ!!」 「るせえな。勝手に逃げろ」  長髪の男は悪態をつくと煙草を一気に吸い、吸いガラを焼けた砂の上に落とすと、巨大な槌を持ってサンドクローラーと呼ばれる巨大な人面芋虫に向かって走り始めた。 「何だアイツは死にたいのか!!悪いキット引き返してくれ!!」 「、、、、、、ハァ」  キットは放って置けば良いのにと言う溜息を一つ吐くと、一心同体である片割れでは仕方ないと渋々であったが、先程来た道をキットと冒険者は長髪の男を止に引き返した。
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