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サンドクローラーの巨躯は、くねらせる度に固そうな皮膚が擦れ異臭をまき散らす。近づくにつれて腐敗臭に似た不快な臭いが濃くなるのを感じた。
「おい、間抜野郎。此処から逃げないんだったら絶対に俺の邪魔はするな!!」
そう言い、槌に粉をかけると。正面を避ける為、冒険者とキットは右に回り込むようにし、長髪の男は髪を気怠そうに括りながら左に回り込んだ。
槌を肩に乗せた長髪の男は、サングラスを一度だけ人差し指と中指で位置をなおしたかと思うと、軽々と巨大な槌を構え殴りつけるのかと思っていたが、サンドクローラーに向かって弓を引く様に槌を構えると全身の筋肉が膨張させ軋む音を響かせた。
膨張した筋肉に浮き出る血管、まるで腫れたように赤くなった肌は身体機能が悲鳴を上げているかのように見える。どういう訳か一瞬、髪の色が濃くなったように見えたその時だった。
ーーーーーーーー鼓膜が痺れる様な破裂音が、耳をつんざいたかと思うと辺りに緑色の雨が降り注いだ。
「嘘だろ、、、、、、、、一発で」
キットが冒険者を守るような形で丸くなっている中をもがき出ると、辺りにはサンドクローラーの体液の雨が降り注いでいた。
恐らくは槌を投げたと思われたが、投げた姿どころか槌の動きすら見えず、遙か遠くに土煙が上がっていた為そこに落下したのだろうと予測出来ただけである。
そして眼前には頭部が弾け飛んだ事が解る程、力まかせに千切れたようなサンドクローラーの死骸が横たわっていただけであった。
「バケモノメ」
「おいおい、助けてやって化け物に化け物呼ばわりされるとは思ってなかったぜ。クソ、キタネェ体液まき散らしやがって最低の気分だあのクソ虫が!」
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