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男はそのまま鎚を回収しながら、悪態をつき何処かに消えようとした為、冒険者は思わず引き止めるとまだ話が何かあるのか?とでも言いたげな表情で此方を見て来たが、渋々此方に向き直った。
「あの、助けて頂き有難うございます」
「早くこの体を拭いたいんだが、町にどうせ報告に行かんといかんし着いて来い。話はそれからだ」
結局、人の話など利いた風も無い長髪の男の後を、冒険者とキットは顔を見合すとついて行く事にした。
再び歩み出した広大な砂の海。熱せられた砂塵の山を幾つも越える。幾重もの広大な砂の、道なき道を越えても砂漠を歩むものは恐怖と隣り合わせである。
この辺りの地形を把握していなかった冒険者とキットにとっては、実は渡りに船でも有った。近場に町が有ると言う事など知る由もなく、サンドクローラーの追いかけられるまま逃げた為、戻る道すら把握はしていなかった。
二時間程進んだ先に、砂色の建物が幾つも見え始めた。歪んだビル群に半分砂に飲まれた都市部は町の崩壊を表している。しかし、彼らにとってはそれこそが日常であり現実であった。
「あそこから集落になっている。大体の物は揃うがギクはかなり高めだぞ。あと、そいつはこの辺りで隠れておけ」
「ヨカロウ」
「キットすまない、ご飯は買ってくるから。荷物の番よろしく頼むな」
巨大な猫のキットは町に入れば目立ち怖がれるおそれがあった為、人の気配を背中に感じながらキットと別れると、冒険者と長髪の男は集落の形成された地域へ入って行った。
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