逃走劇は出会いの始まり

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 大通りらしき道を長髪の男に続いて歩く。集落とは名ばかりで、空いた廃墟の影でバザーの様に敷物の上に品物が置かれているような質素な商売が多く見受けられた。 「確かに品数は多いな。しかし、どの品も何処から手に入れたのか解らんような物ばかりだな」 「此処でそんな口を聞く奴は大体、明日には砂漠の魔物の餌になってるから気をつけろフード野郎」  町に入ってから冒険者はフードを被っていた。目立つ透き通る雪の様な髪の色を持っているうえ、奴隷の証であるアクアブルーの瞳はどう隠しても目立ってしまう故、フードを被る他身を隠す術はなかった。  町の集落を形成している中心辺りで、トタンで出来た小さな小屋が現れると、二人してそのまま中に入った。中に入ると外壁に隙間が多いせいか、薄暗いはずの室内に木漏れ日の如く光が入って来ていた。  室内はカウンターがあるだけの簡素な造りだった。しかし、薄暗く室外からモーター音が漏れ五月蠅さも相まって、本当に店をやっているのかと言う疑問さえ浮かんでしまうような有様だった。  が、唯一の良い点と言えば、そのモーターから受ける恩恵である小さな扇風機が、狭い室内中に風が行き届いている事だけであった。 「客か?うちは水と酒がメインだけど食い物も少し有るぞ」 「水をくれ。こっちにも。そうそう、お前さんサンドクローラーの死骸の場所を教えといてやるよ。しかも超特大のやつだから三日は体液が残ってるはずだ」 「そいつぁ助かる。水の生成も楽じゃねぇからな。化け物共の体液を生成すりゃあかなりの量になるからな」  水が貴重な砂の広がる世界で、水を得る方法はそう多くない。魔物や魔獣から体液を採取し精製する事はこの世界ではよくある話であった。店主らしき男は場所を聞くとメモを取り、何処かに行ったかと思うとすぐにまた戻ってきた。
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