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お嬢様とメイドと移動要塞
「誰がパパとママの馴れ初め聞きたいって言ったのよ。このソファ固くない?」
「うっせぇ。文句言わないで」
レースが沢山使われたゴシックロリータのワンピースに身を包んだお嬢様らしき人物は、ストレートの左右非対称な白色と黒色のロングヘアーをかきあげる。
真っ赤に燃える母譲りの目で捉えた目の前の紅茶に口をつけると、眉間にしわを寄せ”ヌルい”と不満を表情で訴えていた。
その背後で、メイド服の女性は腰に手を当てながらカールした灰色のセミロングヘアーにはメイドの印の様なカチューシャを付けていたが、それを挟む様に獣の耳が二つ付いていた。
その髪の間から見える、褐色の肌は異国の物を感じさせた。もう一つの違和感と言えばその後ろには三本の尻尾がついていた事だった。
眼鏡の向こうから吸い込まれそうな瑠璃色の瞳で見つめながら如何にも面倒くさそうに立っていた。
お嬢様とメイド。傍から見ればそう見えるだろう二人は見た目通りのお嬢様と使いの者であった。
ただ一つ、正確でないという事を言うならば、メイドはお嬢様に対しては横柄な口ぶりで、主人だとはこれっぽっちも思ってはいなかった。
「親の事教えてくれって言ったじゃん」
「馴れ初めは聞いてない。と言うか興味ないわよ気色悪い、ってかいつ人間になったのよキット。話の中では全く出て来なかったけど」
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