10/12
前へ
/33ページ
次へ
 日に日にお腹が大きくなっていくミケ子さんを見ていると、不思議な気分だった。その話を康充にすると、「仔猫が産まれたら見に行ってもいい?」と聞かれた。康充の妹も見たがっているそうだ。「いいよ」と約束したが、母に話すと、「野良猫だから、きっとどこかよそで仔猫を産むんじゃないかしら……」と困惑したような表情になった。  私も康充も康充の妹も、ただ仔猫が見たかった。  次の日から、学校の帰りに康充の家に寄るようになった。康充と康充の妹と私で、ミケ子さんのことを話しあった。どうやったら、ミケ子さんは仔猫を見せてくれるだろうか。毎日三人で意見をだしあった。そしてでた結論は「頼んでみよう」だった。康充の家にきていたミケ子さんに、うちに行くようにと何度も言ったら、ミケ子さんはその通りにした。次は仔猫を見せてほしいと頼んでみたらいいんじゃないかということで落ち着いた。 「ミケ子さん、お願い。仔猫を見せてね?」  私はミケ子さんの顔を見るたびに繰り返しお願いした。  そう話しかけるたびに、ミケ子さんは一瞬動きを止めた。こっちをじっと見ているときもあった。理解しているのだと私は嬉しくなった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加