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「ねえねえ、ミケ子さん。ミケ子さんってとっても美人だよね。きっと、仔猫もすごい美人だよ。私、ミケ子さんの仔猫見たいなあ。ねえ、お願い。私に一番に仔猫を見せてね? 約束だよ?」  私は何度もそう頼み込んだ。  その台詞が効いたのだろうか。うちの家にも入るようになっていたミケ子さんは、私の部屋で仔猫を産んだ。  その日のことは今でも忘れられない。  明け方、産まれた仔猫の鳴き声で私は目を覚ました。仔猫の声はとても高く、私は動物の鳴き声だと認識できず、笛の音かと思った。誰かが私の部屋の中で笛を吹いている夢を見て、寝ぼけまなこで目をこすりながら起きたら、ミケ子さんと仔猫が三匹いた。三匹ともミケ子さんにそっくりな美人三毛猫だった。  しばらく呆然とミケ子さんたちを見ていたが、ふと我に返った。 「あ……一番に私に見せてくれた?」  ミケ子さんが約束を守ってくれたのが嬉しかった。そうっと手を伸ばして、ミケ子さんの頭をおそるおそるなでた。仔猫をなめるのに夢中になっていたミケ子さんは、動きを止め、顔を上げて私の顏を見た。
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