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三毛の色は意外と自然になじみ、草むらを歩いていても、同化していたので、獲物を狩るのにうってつけだったのだろう。こちらを見る黄色の瞳は澄んでいて、キラキラとした宝石のようだ。そして誰よりも敏捷な動きと、三色の毛並みに彩られた美貌は、野生の美しい獣みたいだった。ミケ子さんが弧を描いて駆けていく姿は、普段お昼寝しているときとは違う生き物のようだ。あっという間に視界から消えてしまう。そしてしばらくすると、口に獲物をくわえてゆうゆうと歩いて帰ってくる。
そんな日がずっと続いていって欲しかった。
だけど、去年、私が高校生になった頃から、ミケ子さんはどんどんおばあさん猫になっていった。今まで軽々と飛び上がっていた棚に届かず、ジャンプしても手前で落ちるようになった。いつも元気だったのに、風邪をよく引くようになった。眠っている時間がどんどん増え始めた。
私は認めたくなかったのかもしれない。ミケ子さんはずっと若いままだと思いたかったのかもしれない。
気がついたときには、ミケ子さんはいろんなところが変わってしまっていた。一つ一つはほんの少しの衰えだけれど、全部あわせると、とても歳を取っていた。
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