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そして、毎日後悔しつつも、ミケ子さんに猫用ミルクを飲ませた。どれだけ嫌がられても、私は飲ませ続けた。首を押さえて、口にスポイトでゆっくりと流し込む。
辛そうな表情を見ていると、悲しくなってくる。自分がひどい人間のようにも思えてくる。だけど、飲ませるのをやめたら、ミケ子さんの心臓は止まってしまう。
だから、私は今日もミケ子さんに栄養を与え続ける。こうしている限りは、生きていてくれるのだから。
「ミケ子さんは、きた頃と全然変わらないねえ」
毛布越しにミケ子さんの体温が伝わってきて、愛しさと同時に悲しくなる。
ミケ子さんは仔猫の頃から変わらず、ずっと気が強く、プライドが高く、美意識が強く、そして怠惰だ。そんなミケ子さんがずっと好きで、今も好きだ。もう仔猫の頃のように、元気に庭を駆け回ることはできなくても、一番大事な部分はやっぱり変わってないと思う。
よしよしとなでると、顔を斜めに傾けて犬歯で指を噛んでくるところはあいかわらずだ。ただ、今のミケ子さんはもう歯が抜けてしまっているので、歯茎のふにゅっとした感触が当たるだけだ。少し悲しくなる。
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