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「……康充」
ミケ子さんを抱いて母屋に戻ってきたら、幼なじみの康充がいた。母とコタツでみかんを食べている。なんだか牧歌的だ。
昔は私のほうが身長が高かったのに、いつのまにか追い抜かれた。九九がなかなか覚えられなかったのに、今では数学を始め他の科目も学年でトップクラスだ。年月は流れて、康充もいろいろなところが変わったけど、やはり根底の部分は変わらない。小学校の頃のままだ。
最近、康充は毎日きている。心配してくれているみたいだ。
「あかり、挨拶ぐらいしなさいよ。康充くん、肉じゃがをおすそ分けに持ってきてくれたのよ。白鳥さん家の肉じゃが、あかり、好きでしょう?」
母に注意されて、曖昧に頷いた。
「こんにちは、いつもありがとうね。ミケ子さんはここよ」
「抱っこしてもいい?」
康充が手を伸ばすと、ミケ子さんはうつらうつらしていたのに、パッチリと目を開け、康充のことをじいっと見つめた。
「どうぞ、うちのミケ子姫よ」
「ありがとう、大事な姫を預かるね」
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