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昨日までのミケ子さんは、ぐったりとしていても、息をしていた。触ると暖かく、微かに鼓動を感じた。それがもう今は違うということが納得できなかった。
高校二年生三月。庭の桜の木がミケ子さんのお墓となった。
ぼんやりはいつまでたっても抜けなかった。どこか他人事のような感じがして、本当に私に起こったことなのだろうかと思った。そんな日が続いた。夜になると布団には入るが、いつまでも眠くならなかった。そして、早朝に目が覚めた。食欲も落ちた。自分が自分でないような、ふわふわした感覚がずっと取れなかった。
両親が心配したらしく、朝、康充が迎えにくるようになった。帰りも家まで送ってくれるようになった。小学生の頃、たくさん話した道を私は無言で歩いた。康充も何も話さなかった。
家に帰ってからは、庭にでて、桜の木の根元に座って過ごした。少しでもミケ子さんの側にいたかった。母が心配して、何度も呼びにきた。風邪を引いた日もあった。それでもやめなかった。
風が吹いて物音がするたびに、振り向いて確認した。でもミケ子さんが戻ってくることはなかった。
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