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「ミケ子さん、ほら、綺麗な花が咲いてるよ」
私は庭に咲いている花を、指先でつまんで傾ける。見えているのかいないのか、どことなく不機嫌そうだ。でもかまわない。これは私の自己満足なのだから。
ミケ子さんの黄色い瞳を横から見ると、まるで宝石のようでとても美しい。その目に何が映っているのだろうといつも思う。カメラのレンズのように、いろいろなものを映していそうだ。
ポケットからスマホを取りだして、ミケ子さんの視線の先にあると思われる花を撮影した。続けて空も。シャッター音が響くたびに、ミケ子さんは不思議そうな表情をする。あいまにミケ子さんも写す。スマホを向けると、嫌らしく、こちらを睨んでくる。撮った写真をあとで見ると、涙がでそうになるので最近は見ないようにしている。撮ってばかりだ。
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