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 もしかしたら、ミケ子さんはうちで飼われたくなかったのかもしれない。ミケ子さんは自由を愛す、怠惰で気まぐれで気位の高い生き物だ。そんなミケ子さんを飼い猫にして、ずっと暮らしてきた。今までミケ子さんの意見を尊重してきた。ミケ子さんは深夜に外を歩くのと、冷蔵庫の上でのお昼寝が好きだった。丸くなって眠っていた。けれど、最近は私がミケ子さんの行動を決めている。明るいうちにミケ子さんを外に連れだして、新鮮な空気を吸わせる。床に置いた日当たりのいい猫用ベッドで眠らせる。  若い頃は、夜中に優雅に散歩していたっけ。恋の歌を歌っていた日もあるし、他の猫と派手にケンカした日もあった。寝る場所は、基本は私の部屋と決めていた。たまに気まぐれにコタツの中や父の本棚など、ミケ子さんの気分次第でそこがベッドになっていた。  今では動かない体に苛立つ気持ちもわかないみたいだ。猫用ベッドにそうっと置くと、目を閉じて眠り始める。そして一日中ただひたすら眠っている。 「ねえ、ミケ子さん、最初にうちにきた頃を覚えてる?」  私は優しくミケ子さんに話しかけた。
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