5/12
前へ
/33ページ
次へ
 つい先日のことのように感じる。小学生だった私と小さかったミケ子さん。少しずつ時間が流れて、私は高校生にミケ子さんはおばあさん猫になった。それでも、あの頃と少しも変わらない気がする。  ミケ子さんと最初に会ったとき、ミケ子さんはまだ仔猫と言ってもいいような若い猫だった。ガリガリに痩せていて、目つきだけが鋭かった。何だかかわいそうになって、うちの猫たちのご飯の残りをおすそ分けするようになった。  私にとっては、「ご飯をあげる」だった。正しくは「エサをやる」のだと近所の大人から教えてもらった。それが本当は正しい言葉の使い方なのだろうと思う。だけど、私の感覚では、やっぱりご飯をあげるという感じだった。  毎日ご飯を食べにくるようになり、三毛猫なのでミケ子さんと呼ぶようになった頃、初めて残り物じゃないご飯をお皿に載せてあげた。  ものすごい勢いでウェットフードをたいらげたのを覚えている。うちの猫なら、そんな風にいっぺんに食べたら即吐いてしまうが、ミケ子さんは全然平気だった。 「すごい! 何でそんなに入るの?」  私が驚いても、ミケ子さんは一睨みしただけで、二皿目を食べ始めた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加