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 ミケ子さんは、最初康充の家にご飯をもらいにきていたそうだ。でも、康充の弟が猫アレルギーなので飼うことは無理だった。康充と妹は猫が大好きなのでひどくがっかりしたそうだ。そんなとき、妹が私の家の話をどこかから聞きつけてきたらしい。うちの家は無類の猫好きで、猫を五匹飼っている。五匹飼っている家なら六匹目も飼ってくれるかもしれない。幼い兄妹はそう考えた。康充と妹は何度も「向こうに丘寺さんって家があって、そのおうちは猫を五匹飼っているから、そこに行くといいよ」とミケ子さんに言い聞かせたそうだ。  きっとその言葉が通じたのだろう。ミケ子さんはうちにやってきた。  最初に目があったときから、こちらを睨みつけてくるような、気の強い猫だった。  両親は六匹目を飼うのは無理だと言ったので、私はこっそりと内緒でミケ子さんにご飯をあげるようになった。母は気がついていたようだったが、見て見ぬふりをしてくれていた。父が帰宅する頃にはミケ子さんはどこかに姿を消していたので、父はミケ子さんを見たことがなかった。ただ、母から、最近三毛猫の野良猫が近所にいると聞いていたので、存在だけは知っていた。
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