第一章 「つついづつの恋」

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夏が来て、秋が来て…。 鎌倉の季節を味わうように、私たちは毎日を一緒に過ごし、たくさんの話をしました。 何かわけがあるのか、あまり家族の話はしてくれなかったけれど、一緒に育った幼なじみの友達のことや飼っていた犬の話をよくしてくれました。 「姫もいつか連れて行ってください」 「大姫を、木曾に?」 「はい!義高様と一緒に大きな樫の木でお昼寝がしたいです」 私が思ったままを口にすると、義高様はふっと笑って 「…姫と木曾にか。いつかそんな日が来るといいな」 そう言って私の頭を撫でてくれました。 木曾での話を聞いた後は、どこか寂しそうな義高様を慰めたくて、甘いお菓子をもらってきたり、近所の子犬を借りてきて遊んであげたりしたものです。 「ありがとう。姫がいるから寂しくないよ」 そう言ってくれる義高様の言葉が嬉しくて、「ずっとお傍にいますから」と手を握って答えました。 そんなままごとのような私たちのやりとりを、周囲の大人たちは目を細めて見守ってくれていました。 義高様の素直で控えめな性格は、母や乳母、女房や従僕たち、みんなに好かれて、本当の若君のように大切にされていたのです。
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