50人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
それから一年近くがたったある日、身の回りの世話をしている中で一番年若い女房が、囁くように言ったのです。
「次は、姫様の番ですよ」
私は意味がわからず、「なんの番なの?」と聞き返しました。
「姫様に、お婿様がいらっしゃるんです」
「おむこさま…」
その言葉の意味は知っていました。
結婚する女の人がお嫁様。そしてその旦那様がお婿様。
「ほんとうなの?」
「はい。でも私が言ったことは内緒ですよ」
すかさず口止めされて、私は困ってしまいました。
もっと詳しく聞きたいのに、その女房はなかなか傍に来てくれません。
仕方なく乳母に聞くと、いつもは優しぃ顔が突然険しくなり
「一体誰が姫様のお耳に入れたのです」
と怒りだしてしまいました。
「誰でもいいじゃない。それより教えてちょうだい。本当なの?姫のお婿様はどなたなの?」
乳母は仕方なくため息を吐くと
「わたくしの口からは言えません。お母様に話して頂きましょう」
そう言って、母を呼びに行ってしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!