第一章 「つついづつの恋」

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それから一年近くがたったある日、身の回りの世話をしている中で一番年若い女房が、囁くように言ったのです。 「次は、姫様の番ですよ」 私は意味がわからず、「なんの番なの?」と聞き返しました。 「姫様に、お婿様がいらっしゃるんです」 「おむこさま…」 その言葉の意味は知っていました。 結婚する女の人がお嫁様。そしてその旦那様がお婿様。 「ほんとうなの?」 「はい。でも私が言ったことは内緒ですよ」 すかさず口止めされて、私は困ってしまいました。 もっと詳しく聞きたいのに、その女房はなかなか傍に来てくれません。 仕方なく乳母に聞くと、いつもは優しぃ顔が突然険しくなり 「一体誰が姫様のお耳に入れたのです」 と怒りだしてしまいました。 「誰でもいいじゃない。それより教えてちょうだい。本当なの?姫のお婿様はどなたなの?」 乳母は仕方なくため息を吐くと 「わたくしの口からは言えません。お母様に話して頂きましょう」 そう言って、母を呼びに行ってしまいました。
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