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本当は誰よりもそのことを凉江に伝えたいのに、涼一と真崎の関係は、凉江にとてあまりにも残酷な秘密を抱えてしまっている。 だから少し考え、言葉を変えた。 「――余裕が出てきたから。……今はまだ人並みには戻れてないけど、それでも僕なりに幸せなんだ。だからもう、そんなに心配しな いでよ。僕はもう大丈夫だから」 「涼一……」 凉江は目を見開いた。  細く描かれた眉をぐしゃっと下げ、唇をわなわなと震わせた。そして項垂れ、感情を必死に押し殺そうとしているように静かにむせび泣いた。
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