といかけにこたえはなく

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 扉の隙間から細く差していた光は一瞬で広がって、目が眩むほどの明るさでクローゼットの中を暴き出す。耳までも紅潮させ、熱情に目を潤ませて……火照り切った肢体を掻き抱くことしか出来ずにどうしようもなく総身を震わせる、私の姿を。  彼の顔は逆光になって窺い知れず……ただ、黙ってこちらに手を伸べる。脳裏にはぐしゃぐしゃに絡まった感情がとぐろを巻いて、言葉にならないまま唇をわななかせて……それでも。それでも私は、震える手を彼へと差し伸べて――答えの出ない問いを繰り返す。  ――嗚呼、私と彼の関係性を……一体何と表現すべきでしょうか――
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