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二
昭政と奈々子は、揖斐川沿いの堤防の上を歩いていた。自動車二台がギリギリすれ違えるぐらいの道路が通っていて、時々地元民の運転する自動車が走り過ぎていく。
ちょうど大学が夏休みに入ったので、昭政の実家のある揖斐川町に行き、揖斐川で河童を見ようということになったのだ。電車を乗り継ぎ乗り継ぎ、終点の養老鉄道揖斐駅からは、奈々子の提案でのんびり歩いてきた。
昭政はよもや初のお泊まりデートになるのかと少し期待していたのだが、ただ揖斐川に行って河童を見るだけだからと、日帰りの往復切符を奈々子に手配されていた。
(一泊するとしても俺の実家に泊まることになっていただろうし、どのみち特に進展もなかったか。いや、もう付き合い出してけっこう長いんだし、そろそろ……)
「昭政くん、今ヘンなこと考えてたでしょ」
「い、いや別に。ななちゃんに河童を見せてあげられるといいなー、って」
奈々子はいつものように数秒間昭政の顔をじっと見つめて、まぁいいか、という風に川の上流の方に振り返った。
「それにしても、本当にのどかで自然がいっぱいで、いい景色だねー」
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