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悪は去って
あなたは超人戦隊スーパーファイブを知っているだろうか。
毎週日曜朝8時から全国のお茶の間に放送されている特撮番組だ。
神秘の腕輪に選ばれた5人の若者が宇宙からの侵略者バドラーから地球を守る為に超人ヒーローに変身して戦うというありきたりなストーリーだが、演者の熱演やアクションシーンの評価の高さ、そして大切な事をしっかりと視聴者の胸に刻む台詞の数々で子供から主婦層にかけて絶大な人気を誇っている。
今年で65歳になった俳優の私、菊川栄一もこの番組に出演している。
もちろんヒーロー役ではない。黒い鎧を身に纏い、赤いマントを翻しながら白い長髪と紅い瞳で人間達を恐怖の底へと叩き落とす侵略者バドラー役として。
俳優デビューから生まれついての人相の悪さとドスの効いた声を武器に様々な悪役を演じ続け、3年前には日本映画助演男優賞にも輝いた俳優、菊川栄一。
いつの間にか周りから『悪の大御所』などと呼ばれるようになった私が引退を前に選んだ最後の仕事もまた悪役だったのだ。
「はぁーはっはっは! 神秘の腕輪の力は消え去った。もはやこの私を止められる者など世界のどこにもおらぬ」
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