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「解っていないのはそちらの方だよ。大切なことを忘れてしまっている」
「大切なこと?」
「スーパーファイブの撮影当初から、君は何でもかんでも上手くやれるような役者だったか?」
その問いに対する答えは返ってこない。だが私は知っている。
第一話の撮影開始時、彼は緊張のあまり何度も声を裏返らせた。
第三話のアクションシーンでは殺陣をミスって怪我もした。
様々な失敗を私は現場で見てきた。
「今まで色んな失敗をしてきただろう。そしてこれからも沢山するだろう。だがそれで良いんだよ川岸君」
「菊川さん……」
「一番駄目なことは、傷つくことを恐れて歩みを止めてしまうことだよ」
川岸颯汰は決して何もかも完璧にこなしてきた訳じゃない。
様々な失敗を重ね、傷つき落ち込むことがあろうとも、懸命に立ち上がり努力と成長を重ねて来たのだ。
その姿はまさしくヒーローそのものだった。
「それでもやっぱり僕は、いきなり質の違う演技をいきなり映画撮影で見せられる自信がありません」
なのに今の彼は新しい道で失敗する事を恐れるあまり貴重な一歩を踏み出せないでいる。
「失敗するのが怖いのか?」
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