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「怖くない人間がいますか!? 僕はこの仕事が好きです。ずっとテレビに、スクリーンに映っていたい。失敗して消えたくない、忘れられたくないんです!」
少し挑発じみた私の質問に川岸君はとうとう堰を切ったように抱えていた思いを吐き出した。
「僕だって本音は大人向けの映画作品に挑戦したいです。でもベテランのキャストに囲まれた中、自分なんかの演技が本当に通用すると思いますか」
思い出させなければ、俳優にとって最も大切な事を。
「通用しないかもしれないな。酷評もされるかもしれない。それでも」
それでも忘れてはならないことがある。
「諦めずに戦い続けろ。それが俳優ってもんだ」
「諦めずに……戦う……」
今、背筋を伸ばし心の中で宇宙の侵略者バドラーの仮面を被った私は赤いマントを翻し、意を決してこの台詞を口にする。
彼がこれからこの世界で戦い続けるために、ずっと持っていなければならない大切な気持ちを思い出させるために。
「何故貴様は戦い続ける。ここで膝を折ろうと誰からも非難はされぬだろう。それなのに何故この世界に拘り、立ち上がろうとするのだ?」
私はじっと返事を待った。彼の目から視線は外さずに。
やがて川岸君はこの台詞の意味に気付き、涙を堪えるような震えた声でこう返す。
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