悪は去って

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 テープを回し、先程の自分の演技がモニターに映し出される。こうして第三者の視点から自分の演技を見てみても、やはり先程の演技は会心の出来だった。  撮影監督も腕を組みながら満足げに頷き、今作品が俳優デビューとなる赤羽翔馬役の川岸(かわぎし)颯太(そうた)君も自身の演技に納得のいっている表情である。  もう一度視線をモニターに向けると画面の中で鎧姿をした人相の悪い老人が腹の底に響く様な笑い声を上げていた。  今まで様々な作品で悪役を演じてきた男の集大成がそこに映し出されていた。 「……最後にこの仕事を選んでよかった」  私は誰にも聞こえない程小さな声で呟くと、パイプ椅子から腰を上げてテントを出る。 「えー、それでは映像チェックも終了しましたので今から30分の休憩に入ります。その後はアクションシーンの撮影から再開しますのでアクターの方は早めの現場入りお願いしまーす!」  外ではアシスタントディレクターが声を張って撮影スタッフ達に指示を飛ばしていた。    30分程度の短い休憩ではこの鎧は脱げない。撮影再会時の装着に無駄な時間を使ってしまうからだ。  私は侵略者バドラーの姿のまま、台本とペットボトル片手にいつもの休憩場所へと歩を進める。  それは現場の隅っこにある様々な小道具が雑多に置かれた用具置き場。     
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