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赤羽翔馬役の川岸颯太君が爽やかに挨拶をする。彼も私と同じく衣装は着たままで休憩時間を過ごしているようだ。
「お疲れさん。今までずっと映像のチェックしてたのか?」
いつもはスーパーファイブの若い5人で休憩時間を過ごしている彼だが、今日はは珍しく私の前でパイプ椅子に腰かけている。
今回のストーリー上、他の4人のキャストは現場にはいない。だがそれでわざわざ怖い顔をしたジジイの傍に来るなんて変わった子だ。
「ええ、すこしでも演技の勉強をしないとですから」
「さっきのシーンは良く撮れてたと思うよ。私も君も良い演技をしてた」
私は後輩に対して嘘は吐かない。良い物は良いと言うし、悪い物は悪いと言う性格をしている。
「ええ。ありがとう……ございます」
だから今、心の底から川岸君の演技を褒めたつもりだったのだが何故か彼の表情は曇っていた。
「ん? 一体どうしたんだ。元気が無いじゃないか」
「……スーパーファイブ、もうすぐ終わりですね」
一つの作品を取り終える事、オールアップの声を聞くことは俳優にとって素晴らしい経験となる。
しかしスーパーファイブが終わると口にした川岸君の声は少しだけ震えていた。それを耳にした瞬間、私は目の前の青年が何か悩みや不安を抱えているのだと気づくことが出来た。
「何か、相談事か?」
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