第2話 side yoshiko

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 そこから先は、何を話したのかほとんど覚えていない。短すぎるランチタイムでは到底受け止められず、結局料理はほとんど残したにも関わらず、苦しいくらいで胸が痛かった。 「ごめん」何度も繰り返される謝罪の言葉。 「佳子の家の俺の荷物は、処分してくれていいから。ゆっくり、話をすべきだと思って……いや、話さないといけないのに。思いやりのない切り出し方しか出来なくて、申し訳ない。午後から、大丈夫か? 」  大輔の言葉に頷けたどうかも分からない。 「それから……、ありがとう。元気で」  こうして、私たちの3年近い交際は小1時間ほどで終わりを告げられた。  終わった……。終わった……んだ。  大輔と別れてから、どこをどう歩いたのか気づけは会社へ戻って来ていた。トイレへと入ると麗佳さんとるなちゃんが歯磨きをしながら 「おかえりー」  と、こちらを向くと、驚いた顔で近寄ってきた。 「どうしたの!?  顔、真っ青だよ!? 」 「うん……なんか……へへ……振られちゃった……」  声に出すと、二人の綺麗な顔がぼやけ出す。   「あ、だめだ、昼休みおわっちゃう」  そう言って、なんとか涙をこらえると二人は 「定時まで何とか頑張って! 今日はとことん話聞くから」  優しく背中をさすってくれた。  順調……だった。このままずっと、続いていくと思ってた。プツンと突然切れた糸の様に体が動かない。行き場を無くした心。  ――結婚……もうすぐ29歳になる……。いろんな不安要素が駆け巡る。  仕事……仕事しなきゃ。何度仕事スイッチを押しても、すぐにまた深い闇へ引き戻される。そのたび、スイッチを押しなおし、それを繰り返す。何とか定時までに本日分の業務はこなす。  定時まであと数秒……。麗佳さんと目があったとたん視界が再びぼやけ出す。 「……3……2……1……」  麗佳さんの小さなカウントダウンとともに涙が目からこぼれ落ちた。 「頑張ったね」  麗佳さんが駆け寄って、座ったままの私の頭を抱き寄せ、涙を隠してくれた。普段はみんな外出している事が多いのに、よりにもよって、今日は全員集合だ。  呆然としている男性陣。るなちゃんが大友さんに耳打ちするのが見えた。  事情を説明してくれているのだろうか。
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