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部屋に入る前に待てと言われて気づく。やはり、急に女性の部屋に来るのはまずかったか……。
俺の部屋にするべきだったか。だけれど……今なおも、一緒に過ごさない選択肢はなかった。
ドアはすぐに開かれた。中に入ると、いつも通りの朗らかな彼女だった。
なぜ……今は、避けないのか。無理やりにでも、この時間を断らなかったのか。
「で……最近……なぜ……避けていたんですか? 私のこと」
時期尚早。わかっている。固まる彼女に、思わず笑みが溢れた。悪意はなかったのだろう。
ごくごくプライベートな彼女のテリトリー。彼女の香りに包まれた空間。彼女を近くで見た。
「久しぶりに、顔を見て……話ができたので」
彼女も避けずに、俺を見ていた。久しぶりに見た彼女の顔に……普段とは違う、華やかなメイクに錯覚を起こしそうになる。元々、約束していたかのように。
そのメイクは……俺の為であるかのように。
「皿に、盛っていきましょうか? 」
自分を止める為に、そう言った。触れたいと、彼女へと手が勝手に動き出してしまう前に。
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