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第25話 side yoshiko
「何か……変わりましたか? 29歳になって……」
さっきの、小さな声に聞き返す間もなく続く。変わったような……変わらないような。
ハッキリと変わったと言えるのはこの気持ちで。ただ、この気持ちだけで……。
「変わりたいとは……思っています」
「それは、どういう……」
「自分の気持ちを……伝えられる……様に……」
そう、彼の厚意だけに拠るものに……このまま彼を縛りつけてしまわないように。
「気持ち……ですか? 」
彼は理解し難いといった表情のまま、ゆっくりとこちらを向いて……目が……合う。
パーソナルスペースが近いと言われる私でさえ、躊躇する距離で。
次第に早くなる鼓動……言ってしまったら、こんなことも全部なくなってしまう。
だけど、彼の優しさにこれ以上、甘える前に……。
口を開きかけたその時……携帯の通知を知らせる電子音によって目が逸れた。
……私のではない。とういうことは、彼ので。
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