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「私……ちょっと、気になるというか……癒されてる人が……いるかな」
「きゃー!」語尾にハートマークをつけて、るなちゃんが歓声をあげる。
麗佳さんに気になる人がいる嬉しさと、自分の話をそらしたい感情が見え隠れする。少々わざとらしいくらいのテンションだ。
「うん、素敵な人だなって思ってて……今度また、紹介するね」
「紹介!? え? もう、そんな関係なんですか? 」
確かに、麗佳さんに好意を持たれて拒否する男はいないだろうけど。
「まさか、全然ちがう……うふふ、また、今度ね」
そう言って、お酒のせいか、照れているのか赤らんだ頬をゆるめて言葉を切った。いいなぁ、ふたりとも。初めて聞いたふたりの恋話ににやけてしまう。
少し、気持ちも晴れた。また、みんなの前で泣いてしまうかと思ってたのに楽しく過ごせてホッとした。良かった……これ以上恥を晒さなくて。
大丈夫、きっと……。
店を出ると、路線が別の為、そこで解散となった。
「お疲れ様でした。皆さま、今日は本当にありがとうございました。話聞いてもらえて、ちょっとスッキリした……」
笑って言うと
「ほんと、大丈夫ですか? 毎日でも付き合いますからね! 」
るなちゃんが私の両手をぎゅっと握って言った。
「ん……ほんと、大丈夫そう。ありがとう」
「結城さーん! ちゃんと送ってあげて下さいよ! 」
と、横の方に言う。
「……わかりました」
う、一瞬間があったよね。
「いえ、方向、同じ所までで! うん、大丈夫、大丈夫です! 」
焦る私に
「行きましょうか」
平常運転の彼。お酒を飲もうが、全く変化がない。
恥ずかしい……なんだコレ。
そういえば、並んで歩いたのも初めて。
背、高いな……160もない私とだと随分な身長差だ。そして、私の目の前がお尻なんじゃないの?っていうくらい長い足。
にもかかわらず、私に合わせて歩いてくれている。
紳士……。
ジャパニーズジェントルマン。
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