第4話 side yoshiko

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 仕事では、それなりに長い付き合いであるのに初めて見る横顔に、急に距離感を意識する。  二人っきり。  いや、店内は結構賑わっているけど。  再びこちらを向かれた時に、平常心が粉末になってしまった……。  な、なにか、なにか、話、話!そうだ、謝罪、謝罪に、お礼!前を向いたまま、口を開いた。 「あ、あの、今日すみませんでした。お時間頂いちゃって……その、結城さんと過ごしたい女性なんて100万人くらい、いるだろうに……あ、今だって……独占しちゃって……」 「いえ、予定もありませんでしたし、貴重な意見も聞けました……」  るなちゃんに散々言われてた、あれだろうか……。 「すみません。込み入った事まで聞いてしまって……」 「特に、聞かれて困る事などありません。むしろ、慰め要員なのに、面白くない話を聞かせてしまいました」  慰め要員?  あぁ、会社出る時に二人からせっつかれてたな。そんな要員として、派遣されたのか。 「駄目ですね……」 「え? 」  再び合った目に、半分石になりかけながら聞く。 「交際も、結婚も……女性が相手なものは……苦手です」 「結城さんにも苦手なものなんて、あるんですね」 「難があるんでしょうね。私には……」 「いや、ないでしょ」  脳みそを通さずに、瞬時に口が答える。  何を言うか、こんな完璧な人が。これで難ありなら、私なんて難しかないわ。  ……ふ 「女性の、年齢への認識も……男とは、違うものですね」 「それは……子供を産むとか、体のリミットもありますから……」 「なるほど……それで……辛い思いを? 」  あー、今日泣いたこと言われているのだろう。恥ずかし過ぎて、それを誤魔化すのにそこから饒舌になった。 「そ、そうですね。失恋っていうか、私の人生計画では……当初、26歳で結婚、27歳で1人目を出産、29歳で2人目……そ、それがですね、28歳でも独身っていう! 大幅にずれ込んでしまったもので、軌道修正して……30歳までに結婚する! という2回目の人生設計を組み直したところで……まさかの、29歳目前に相手すらいなくなって……急に先が見えなくなってしまい……。う、げほ」  一気にまくし立てる様に話して、むせた。  ラテを飲んで一息つく。 「……なるほど……」 「もちろん、振られたのは辛いけど、ちょうど仲良しの友達から次々に結婚報告を受けたところで……それも重なって、このまま30になっても……とか、不安に襲われて……」  そこまで話したら、アホさに赤面する。周りに影響されて結婚するもんでも、ないだろうに。何言ってるんだろ、結城さんの前で。恥ずかしさで、じわりと涙が滲む。
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