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焦点すら合わず、立ちすくむ私を背にトレーを返却に行く結城さん。
店員さんと話を交わし、すぐに戻られる。
「行きましょうか」
……。
聞き間違いかな?独女が見せた、悲しき妄想だったのかな?可能性的には妄想の方が高いな……うん。
可哀想な、私。こんな妄想まで……。トボトボと、結城さんの後を追う。
「はい、これ」
と、手渡される。
「え? 何……ですか? 」
「メモがなかったので、店員さんにいただきました」
私の手の中には空であろう、先程のラテが入っていたのと同じ紙製のカップ、およびプラキャップ。
“結婚予定日”
そう書かれていた。私の来年の誕生日の日付とともに……。
「証拠です。先程の約束の」
妄想乙。
ん?なに?
なに?
そこから……酔ってもないのに記憶を飛ばし、
「家まで……」
と、おっしゃった彼から逃げるように帰った。妄想ではないという証拠のカップを、両手にしっかりと持ったまま……。
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