24513人が本棚に入れています
本棚に追加
/638ページ
第6話 side yoshiko
綾さんはじっと私の顔を見ると言った。
「それと……なにか、あった? 」
ギョッとして固まる。それが肯定とみなされ、不自然に視線を逸らしてしまった。
何で……顔?顔にでてる?思わず顔を撫でる。
「顔には何も、書いてないわよ? 」
クスクス笑う綾さんに、参った……とばかりにため息をついた。この人の勘の良さったら。
「ちょっと、雰囲気がね……仕事の事じゃなさそうだし、大丈夫ならいいの」
笑顔を向けられ、これ以上踏み込まないから大丈夫。そう言われた気がした。それでも、これ以上迷惑をかけないように自分から話した。
「あ、実は失恋しちゃって……すみません。業務に支障でないようにはしてるつもりですが」
綾さんはちょっとばかり驚いた表情を見せたが、優しい眼差しで
「そうだったの。てっきりプラスな方かと思ったから……。ごめんね、いいよ、辛かったら仕事こっちにまわして? 」
「え? いえいえ、大丈夫です。むしろ、仕事どんどんしたいくらいで! 」
そう言うと綾さんは笑って
「無理はしないでね? じゃあ、書類よろしくね」
そう言いながら、私の背中を軽くさするようにして、フロアを出て行った。
……プラス?
良いことでもあった様に見えたって事?確かに、一瞬大輔の事、忘れてたけど。昨日、ここで泣いたってのにゲンキンだなぁ。それも、これも、結城さんのショック療法のおかげか……。
最初のコメントを投稿しよう!