第7話side yuki

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 昼休憩間近。カタカタと小刻みに揺れている。 「ゆれるなよ。お前、それ、揺れハラだぞ」  吉良が隣の席の震源地(大友)に言った。 「すまん、もう気になって、気になって。……よし! 行くぞ! 」  時間ちょうど。1日持ち越された報告に、痺れを切らしている。誰もが気にする程に、あの日の彼女の涙は衝撃だった。彼女と一番付き合いが長い大友でさえ。  財布と携帯だけを持って、吉良と俺を押し出すように連れ出した。大柄の男3人が急ぐ様はずいぶん滑稽だろうが、大友に足を緩める気配はない。  会社から少し離れた定食屋を選んだのは、社内の人と会わないよう配慮しての事だろう。 「日替わり3つ! 」  メニューを選ぶ事も叶わず、席につくなり早々に 「「で? 」」  2人に詰め寄られる。 「彼女と約束をした。……結婚の」 「「はぁ? 」」  水を一口飲んで続ける 「まぁ……実際にすることは……ないだろう」 「お前……下手くそか! 」  吉良はイライラした様子で言った。 「意味、わかんねぇ」  大友は呆れた様子だ。 「あの日の昼休み、彼女は別れを告げられたらしい。……3年付き合った恋人に」  人のプライベートな話を勝手に話して良いものかと憚られたが、説明が終わるまで食べることも許されないだろう。 「あ……それで……」 「午後から急に様子が……違ったもんな」 「昼休みにかぁ……キツイな」  二人とも、彼女の様子の変化には気づいていたようだ。 「あぁ。それで……あの日……30歳までに結婚したかったって……言ってたんだ」 「あぁ、女性は、そんなもんなのかね」 「いくつだっけ? ……彼女」 「もうすぐ、29」 「もうすぐ? ってことは……誕生日前に? 」 「ああ」 「あー……」 「今の年で1人になったのが……辛かったみたいだな。このままずっと、1人かもって……」 「大丈夫だろ。彼女なら」 「俺もそう思う」  二人と俺も同意見だ。彼女なら大丈夫。だからこそ、約束をしたのだ。 「だから、30になっても相手ができなければ。という、目先の不安を取り除く約束をしただけだ。ま、保険みたいなもんだな」 「でも、お前……もし、彼女に相手できなかったらどうすんの? 」  確かに……保険だって、実際に使う事はある。むしろその為に保険に入る。 「する」  吉良の質問に即答した。
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