ショートストーリー

11/18
前へ
/638ページ
次へ
 午後三時を過ぎたあたり、 「たい焼き、買ってきたから休憩しよーぜ! 」  大友が帰って来るととたんに賑やかになった。女性たちが率先して場を整えてくれる。 「お、ちょうど休憩? たい焼き買ってきたんだけど」  と、吉良も帰って来た。 「なんだよ、お前もかよ」  大友と吉良が言い合っていた。そうか、こんな風にみんなに買って来れば良かったのか。気が利かないなぁ、俺は。 「ごめんなさい、気が利かなくて」  どうやら、俺と同じ事を思っていたらしい中条さんが謝罪をした。 「いや、そんなつもりじゃないって、麗佳さん。ほら、中身色々あるけど、何がいい? 」  吉良が紙袋を開けて中条さんに見せていた。 「冒険したいのだけれど、やっぱり普通ので……私のこんなところがつまらないのかしら」 「いや、そんなことないから。好きなの食って」  中条さんの言い様に吉良がうろたえ柔らかく否定する。 「ありがとう。あなたはほら、カスタード」 「え、俺? 」  中条さんにカスタードのたい焼きを握らされて吉良が戸惑っていた。 「ええ、顔が甘いもの」 「……顔……」  吉良は俺より甘いものが苦手だが、言い出せずにいる姿に、可笑しい。 「大友さんは、何にされます? 」  相原さんが順に配ってくれていた。 「俺、何でもいい。残ったやつ食う! 」 「ああ、じゃあ、何かわかりませんがどうぞ」  と、相原さんが適当に渡す。 「あはは! 大友さんが咥えるとドラ猫みたい! 」  と、失礼なことを言われて、大友が固まっていた。 「……ドラ……」
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24891人が本棚に入れています
本棚に追加