いつかのいつか side yuki

3/5
前へ
/638ページ
次へ
 彼女の予想通り、長蛇の列ではあったが、イートインを諦めてテイクアウトにする人も多かったため比較的早く列は進んだ。列は、女性同士やカップルが目立った。  俺の横には、満足そうに並ぶ彼女。そんな彼女に俺も満足する。 「でもさ、でもさ、本当に良かったの? 」 「何回目、それ聞くの」 「だってさ」 「いいよ」  日曜日は俺のと言っても、実際、彼女と一緒にいられればどこだって構わない。俺は甘いものは好んで食べない。だが、注文はするつもりだ。きっと彼女が俺の分も食べるだろうから……。飲み物は抹茶にしようか。彼女が俺に似合うと言ってくれたのだから。そんなことを思う。  彼女は俺の横で申し訳なさそうにしながらも、N.は何が美味しいか、望月庵はどう素晴らしいかを延々と語っている。俺はその情報量の多さに感心しながら相槌を打つ。  ふと、列の中に飛び出る頭を見つけた。……なんだ、あいつらも来たのか。そう思ったが、見て見ぬふりをすることにした。が、そのタイミングでスマホが震え、仕方なく電話に出ることになった。 『おー、さっすが。前の方にいるじゃん。佳子ちゃん喜んでんじゃね。お前も、愛だな。てか、合流したくても人多くて無理っぽいな』  列を振り返ると、スマホを持った吉良がひらひらと手を振った。 「……いや、合流する気はない」 『あっはは、だな。そうしてやろう。あいつのために』  吉良が、ちょいちょいっと後ろを指した先にはさらに頭一つ分……以上出ている男がいた。……大友は、パートナーと一緒にいるのを見られるのを極端に嫌がる。恐らく、彼女といるといつものあいつではなくなる。そんな姿は見られたくないのだろう。
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24969人が本棚に入れています
本棚に追加